第3章 自滅のシナリオと病気の3タイプ


  さて最後は、病気や症状から見たタイプの分類です。自滅のシナリオと病気の関係を理解するには、こころと自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系などが刻一刻一体になって動いていること、これを心身相関といいますが、心身相関を理解する必要があります。心と体は一体になって動いているという事実です。


◆心身医学の理解

  誰だって病気になりたくはありません。なのに病気は溢れています。これは、一体誰が悪いのでしょうか? 私たち自身のストレスが病気をまねいています。それを理解していただきましょう。

 体の調子が悪くなって、不安や不満になっている方はすくなくありません。不安と不満から自由になるためにも、体の健康を得るというためにも、この心身相関を理解してください。

  私たちの身体は、75兆個という途方もない細胞からできています。一つ一つの細胞や臓器が勝手に動けば生命が無くなります。そのため全体として調和しながら働いてくれるように、いろいろなシステムがあります。

  代表的なものが、自律神経系です。血圧、心臓、体温、呼吸、胃腸系などをコントロールしています。それから、内分泌ホルモン系があります。甲状腺ホルモン、 副腎皮質ホルモン、性ホルモン、成長ホルモン、いろいろなホルモンをコントロールしています。

  さらに、免疫系があります。傷口が膿みやすいかどうか、風邪をひきやすいかどうかなどに関係しています。それから最近では、がんとの関係が注目されています。

  このような生命を維持するシステムの上に本能が載っているのが動物です。さらに、その上に心が載っているの人間です。ですから、心と自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系は一体となって動いています。これを心身相関といいます。「心と身体はひとつだ、心技一体だ」と日本ではよく言いますが、医学的に言えば、心身相関ということです。そして、心身相関から病気を考えていこうとするのが心身医学です。

  心身相関と言うとむずかしそうですが、日常生活ではごく普通に見られることです。例えば、興奮すれば、血圧が上がり、心臓がドキドキしてきます。結婚式のスピーチなどで順番が近づけば、ドキドキし、「はい、どうぞ」と紹介されるともう心臓が飛びだしそうです。しかし、誰かに大きな棒で叩かれているのではありません。ただ、頭の中で自分の番だと理解しただけです。それが自律神経を通って、心臓や血圧や体温に反映します。

  あるいは、ジョイナーやカールルイスという100メートル競争の金メダリストがいました。あの人達だって、ヨーイという声を聞いているのは耳です。走る合図だと理解しているのは頭です。それが身体に伝達され、身体が熱くなり、心臓が強く脈打ち走る準備ができる。そこへドンとピストルがなるので走り出せるのです。

 もし自律神経系が切れていたら、ヨーイ、これは走る準備だと分かっても身体は燃えて来ません。ドン、「それでは皆さん一緒に行きましょうか」という程度になりとてもスタートダッシュはできません。このように、心身は常に一体として動いています。

 例えば難治性の潰瘍というのがあります。これは病院に入院すると簡単に治ってしまう。しかし、退院して会社に行くとまた潰瘍を起こす。また入院してくると簡単に治る。その繰り返しで、なかなか治らないから確かに難治性です。

  しかし、この人の病気は一体どこに原因があるのでしょうか。胃自体にあるのではないです。会社に行ってストレスがかかると自律神経を介して胃酸がだーと分泌されます。
そして自分の胃に穴を開けてしまう。だから、この人の病気の本当の原因はストレスです。心のコントロールがうまくいかない限り治りません。やはり心と身体は一体として考えねばならない、ということがわかります。

 あるいは、過敏性腸症侯群というのがあります。この「電車は次の駅まで20分は止まらない。トイレに行けない」と思うと、トイレに行きたくなる。あるいは、重要な会議で、「2時間は外にでられない」と思うと、とたんにもよおしてきて会議にでられない。緊張が自律神経系を通して腸を刺激するのです。

  高血圧もよくわかります。カーとしただけで血圧が上がるので、心と身体が一体であると考えないと理解出来ません。それが心身医学が誕生した理由です。考えてみたら人間の心と身体は別々にあるのではなくて一体であるという、当り前の事実に気付いただけです。

 内分泌ホルモン系についてもそうです。ストレスがあると、例えば、甲状腺ホルモンがたくさん出ているようなバセドウ病があれば悪化します。それから、副腎皮質ホルモン、これは有名なホルモンです。アトピー性皮膚炎のときに塗るとか、喘息のときとか、ネフローゼのときに使う強力な薬ですが、副腎から分泌されているホルモンです。ストレスがかかると副腎皮質ホルモンの分泌が増加します。そうすると血糖を上げます。自律神経も血糖を上げますから、糖尿病が悪化します。

  性ホルモンにもストレスが影響します。強い不安があれば生理が狂ったり、時に無くなったりします。これは生物的な適応としてみると、非常によく分かります。不安が強い環境や状況では子供を産むのは危険です。不安があると生理が止まって子供が産めなくなる。これは適応現象なのでしょう。

 それから、最後の免疫系です。例えば、大きな悲しみがあると、その後がんが発生しやすいのではないかと考えて調べた研究者がいます。その研究者は一番大きな悲しみは、長年連れ添った夫婦が、そのどちらかに先立たれることだと考え調べてみると、そういう方にはがんの発生が多かったということが報告されています。あるいは、同じ様にがんになっても、積極的に前向きに明るく生きる人は長く生きる。

  極々稀ですけども、自然治癒もあり、治ってしまう人もいるということです。そういう人達の性格を見てみますと、非常に明るくて前向きだととうことが報告されています。免疫系が活性化するのでしょう。この方面の研究はまだ始まったばかりなので、確定的なことを言うには、もっと多くの研究が必要ですが大変興味のあるところです。

 以上のようにストレスがあると、頭の上から自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系に爆弾を落としているのと同じです。これでは健康にはなれません。さらに昼間だけではなく夜もそうです。最近は簡単に24時間心電図をとれます。それで見ると夜中に不整脈が発生している人が結構います。どういう時かと言うと、夢を見てる時です。怖い夢や腹の立つ夢です。すると、自律神経系が刺激されて不整脈が発生する。このように、昼も夜も身体に爆弾を落としています。

  このようにストレスは、2つの経路で健康を破壊します。一つは、心身相関を直接悪化させるのと、もう一つはストレスを発散するために、過食やお酒や煙草が必要になり生活習慣が乱れることです。

 この2つの結果として、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症になります。どの病気が出るかは、一人一人遺伝子がちがいますので、高血圧の遺伝因子があれば高血圧が出るし、糖尿病の遺伝因子があれば糖尿病がでます。

 それから、もう一つは年令です。若い時は病気は現れず、肥満や自律神経失調症ですみますが、年齢と共に発病してきます。このように、年令と遺伝因子によって、どういう病気や症状が出るかが決まる。これが心身医学的な病気の理解です。
  以上のように、私たちの病気はストレス病です。自滅のシナリオが病気を引き起こすことになります。

  次頁の病気の3つのタイプと性格分析の表を見て下さい。自分はどのタイプになるのか分かりますか。これは、今まで整理のようなものです。自分の行く末の姿が理解できるでしょう。行く末などと言いますと、多少大袈裟ですが、性格分析を学ばず、今のままのライフ・スタイルで行けばどうなるか、どのような症状や病気になるかを見てみようといことです。


◆悩める人タイプ

  先ず、悩める人タイプの方では、充実感が低下すると、心に悩みがでてきます。不安がでてきます。人間関係に悩む。自信がない。まさに悩める人です。性格分析ではE(人の評価を気にする子供)が高いことが特徴です。

  悩みとは、「自分は間違っているのではないか、正しくないのではない か」と思うことから出てきます。つまりE(人の評価を気にする子供)からです。自分は正しいと思っている方には、思うようにならなくて腹が立つことや困難なことはあっても、悩みはありません。

  このタイプは「ボロぞうきんさん」、「不安さん」です。「バラバラさん」は次の自律神経失調症タイプとこの悩める人タイプの両方の特徴をもちます。そういう意味からもバラバラさんでしょう。

  さて、このタイプの方は、頭のなかの悩みが、心身相関を通して身体に伝達されます。自律神経系も内分泌ホルモン系も免疫系も乱れます。昼だけではありません。夜は夢を見る。昼よりも不安は広がります。昼も夜も心身相関が乱れ、いろいろと自覚症状が出るのも当然ですね。

  頭が痛い。肩が凝る。胃の調子が悪い。便秘や下痢になる。身体がだるい。疲労感が強い。熱ぽい。死ぬのではないか、その不安が今までの不安に加わり、悪循環を起こします。
不安から逃れるために、お酒もタバコも必要です。過食にもなります。心身相関の悪化の上に、ライフ・スタイルが乱れてきますので、ますます調子が悪くなります。

  自覚症状が強いので重病になったかと思い、病院へ行きますが、心身相関からの症状ですから、最初は殆ど身体的な異常がありません。門前払いを食わされることになります。ここが従来の治療医学の限界です。

  しかし、問題はこの様な状態が続けば、いつかは身体の異常がでてくるのは当然です。最後はがん・脳卒中・心筋梗塞に至ります。はやく、性格分析を学んで心も体も楽になって欲しいものです。

  ただ、このタイプでもっとも深刻な問題は、「ボロぞうきんさん」です。このタイプの方のなかには、不安が強くなればなるほど、病院へは行かない方がいます。
  評価が下がることが最も不安なのですから、とても病院へなど行けません。まして入院など出来ません。「過労死」するまで止めることが出来ない。そういう方があるので注意が必要です。

  ですから、このタイプの方の解決法は、いろいろな身体的な問題があっても、不安や悩みの解消が先です。例えば肥満がある。禁酒・禁煙が必要である。その時、減量や禁酒・禁煙がを先にしますと、食欲やお酒やタバコと戦うという苦しいことをさらに増やすことになります。それで成功するはずはありませんから、元の木阿弥の繰り返しで、ますます心が暗くなります。

  心の問題の解決が最優先です。充実感が高まり、不安や悩みが少なくなれば、身体の問題はおのずと消えます。この点は実に大事ですのでしっかりと理解して下さい。

  ただ、良い点もあります。このタイプの方はE(人の評価を気にする子供)が高いので、充実感が回復すれば、自己反省能力が出てきます。自分をよく理解することが出来ます。自分をコントロール出来るようになります。むしろ、結果として本当の自分を発見し、それを生きれるという点では他のタイプより早いかもしれません。


◆自律神経失調症タイプ

  次の自律神経失調症タイプの方は、心の悩みはありません。ただ、肩凝りや頭痛、動悸、胃腸の調子が悪くなる、便秘、不眠、さらには眼まいなど、いわゆる自律神経失調症といわれる自覚症状が強く出てきます。

  このタイプの方の典型は、D(不満)が高く、その不満をA(きびしい親)で解決することです。つまり「あんたが悪いさん」です。

  充実感が低下し、思うように行かないと腹が立ってイライラする。「あんたが悪いさん」ですから、悩みや不安はないが、人を見ると腹が立ちます。悩みは自分が悪い、間違っていると思うから出てくるので、「私は正しい、間違っているのはみんなあなただ」では悩みはありません。どんなことも人の性に出来るので、その点は本人は楽です。

  ただ、腹が立ちます。イライラします。人の欠点がよく見えます。これは攻撃体制、戦闘体制に入っているのと同じです。常に、身構えていることになり、肩が凝り、頭痛がします。心身相関で自律神経が過剰に緊張するので、その症状が出てくるのは当然です。

  人を攻撃すれば、人間関係はうまく行かなくなります。そうすると、協力が得られないので、なにをするにしても障害が出てきます。うまくことが運ばないからますますイライラして人に当たる。当たるからますます人間関係が悪化する。憂さ晴らしに、過食になったり、お酒、タバコがいるということになります。

  本能を満たしている時は、浮世は消えます。身体的にも心理的にも大変気持がいい。肩凝りや頭痛も、イライラも一時的に消える。だから、いつも食べたり、飲んだり、吸ったりしなくてはいけない。自律神経失調症の症状の上に、肥満やアルコールやタバコの害が加わる。体の調子が悪くなるのは当然です。

  しかし、悪くなるので救われるという点もありますね。次の、猛烈タイプの方は症状がないのです。体調が悪くならないので止まらない。突然死までいくので大変なのですから、症状があるという点は決して悪くありません。

 ただ、自覚症状が強くても、悩める人タイプと同様で、初めのころは病院へ行っても殆ど身体的な異常が出ません。門前払いをされることが多いでしょう。
  しかし、イライラして心身相関が悪化し、過食やタバコ、お酒でライフ・スタイルが乱れる。この状態では、いつかは本当の病気になります。その時までほうっておけません。

  まして、「あんたが悪いさん」はE(人の評価を気にする子供)が低いのです。つまり、自己反省能力、内省能力が少ない方が多いです。だから、身体の不調は訴えられますが、自分が原因だとはなかなか理解出来ません。不満により自律神経の過緊張を来したことによるものだと理解するのは難しいのです。およそ自分が悪いのではないか、自分が原因かもしれないと考えることはないのです。

  充実感を失えば、ますます人の責任にします。ますます悪循環に落ちていきます。病気が出てきて、過食やタバコ、お酒を止めなければならない状態になっても、腹が立つことばかり多くて、とても止められません。やめなさいと言われると、ますますライラするだけで逆効果にしかなりません。

 このタイプの方は、よく自分の性格の問題点を理解して下さい。それを理解しないかぎり、いつまでたっても改善出来ません。「憤慨死」するまで止まらないことになります。

  このタイプに属する方としては、「あんたが悪いさん」の他に、「バラバラさん」があります。「バラバラさん」は、E(人の評価を気にする子供)も高いので「悩める人タイプ」の両方です。かなり、複雑な方ですが、E(人の評価を気にする子供)が高いだけに理解は早いかもしれません。よく理解し、充実感を上げれば悪循環から出られるでしょう。

  「不満さん」は、A(きびしい親)が高くないので攻撃的ではなくて、自暴自棄的になるでしょうが、心身相関は悪化するのでこのタイプに属します。

  それから、クールさんもこのタイプに属します。クールさんは、最初はE(人の評価を気にする子供)さんで、ある時からもう人の評価を気にする子供)る生き方は止めると決意した方か多いでしょう。不安を全てクールに処理する道を選んだのでしよう。

  しかし、常に不安をクールに処理しよう、処理しようとしているので、自律神経が過緊張します。自律神経失調症の症状が出てきます。E(人の評価を気にする子供)を押えようとしているかぎり、緊張から逃れられません。Eは強烈な本能ですから、押えられるものではありません。

  「伝統さん」も自分の本音を押さえ、仮面を生きているので緊張が強くなり、自律神経系失調症の症状がでることが多いでしょう。
  その他、「不安さん」で「行け行けさん」を演じている場合など、どのようなタイプであれ「仮面さん」はすべてこのタイプになります。


◆猛烈タイプ

  最後は、猛烈タイプの方です。典型的なのは「行け行けさん」です。強い肉体と強い精神力に恵まれています。まさに猛烈タイプなのです。前章の性格パターンを見ていただければ、十分納得がいくはずです。

  仕事もうまく行く。自分も楽しんでいる。なにもかもうまく行くのです。不満も出ない。不安もない。夜もぐっすり眠れる。これでは心身相関は快調なはずです。爽やか指数も著しく高く、不快指数はほとんど無いのが特徴です。

  だから、猛烈に生きられます。不安や不満があれば、心身相関が悪化して体調が悪くなりますし、人間関係も悪くなります。とても猛烈には生きれません。身体的にも無理だし、社会も受け入れてはくれません。

  しかし、このタイプの方は、バリバリ仕事が出来る。食べたり飲んだりハードな生活も平気です。楽しくてしょうがない。症状が出ないから止まる理由がありません。
  しかし、 身体は、さすがに50才代ともなればかなりボロボロですが、がん・脳卒中・心筋梗塞は起きるまで自覚症状がないという特徴があるので、本人としては止まる理由が分からない。だから、医者や家族がどんなに止めようとしても無駄です。とことんまで行って突然死する。

  仕事の拡大に充実感を感じるタイプなので大変危ないですね。仕事が拡大すれば、接待やパーティーの機会が多くなるのは当然です。さらに今まで以上に仕事を拡大させようとすれば、さらにパーティーが増える。肥満になるばかりではなく、生命の危機が迫ってきます。

  性格分析でE(人の評価を気にする子供)が極端に低いことは、不安を感じる能力、自己防衛本能が弱いということなので、よほど理性を働かして自分をコントロールしないかぎり倒れるまで止まれないということになります。

 この中には、どちらかと言えば「伝統さん」も入るでしょう。「伝統さん」は自律神経系失調症のタイプにも入りますが、多少苦しくてもとことこまで頑張るので、自律神経系失調症に止まらず突然死までいくことが多いでしょう。

  「行け行けさん」と違うのは、こどもの部分がE(人の評価を気にする子供)もD(自由気ままな子供)も共に極端に押えられているので、不安や不満はないというより、弱音やわがままを言うのは悪と考えています。

  Dが低いので楽しんで仕事をしていません。義務感で頑張るので、心身相関は悪く、爽やか指数は高くなりません。このタイプの方こそ、自分がなく、仕事が自分です。Dが低いので「行け行けさん」のような明るさはなく、むしろ過労死のような感じがするかもしれません。
  また、「普通さん」で頑張りやさんの場合も、どちらかと言えばこの中に入るでしょう。

  以上が、病気の3タイプと性格分析の関係です。自分がどのタイプに入るかお分かりいただけたでしょうか。

  充実感テスト(爽やか指数・不快指数)で充実感を判定し、性格分析で性格を理解し、病気の3タイプで自分の行く末を見る。これだけすれば、簡単に自分の問題点が理解出来たはずです。

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